ニューロダイバーシティ・パラダイムとは?ニューロダイバーシティとの違いも解説
ニューロダイバーシティ・パラダイムとは?ニューロダイバーシティとの違いも解説

ニューロダイバーシティ・パラダイムとは?ニューロダイバーシティとの違いも解説

自閉スペクトラム(ASD)やADHDなど発達障害に関する概念として、「ニューロダイバーシティ」というキーワードが広まりつつあります。

しかし、ニューロダイバーシティを理解する上で欠かせない概念である、「ニューロダイバーシティ・パラダイム」は、まだ知名度が低いです。

そこで、この記事では「ニューロダイバーシティ・パラダイム」とは何かについて解説していきます。

そもそも「ニューロダイバーシティ」とは?

まず、ニューロダイバーシティ(神経多様性)とは、自閉スペクトラム(ASD)やADHDなどを含む知覚や思考のスタイルの多様性のことです。一人ひとりの脳は異なっているため、すべての人はニューロダイバーシティの一部であるとも言えます。

詳しくは、こちらの記事も御覧ください:
ニューロダイバーシティとは?当事者が解説

自閉スペクトラム症の傾向がすべての人にグラデーション状に分布している様子
自閉スペクトラム症の傾向はすべての人にありますが、その程度には大きなばらつきがあります(出典:日経ビジネスhttps://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00112/00041/?P=3)

ニューロダイバーシティ・パラダイムとは?

ニューロダイバーシティ・パラダイム(Neurodiversity Paradigm)は、近代における「人間の脳や心には唯一の“ふつう”で”健常”なスタイルがある」という前提に対して、疑問を投げかけるものです。
標準的な教育制度や職場は、未だに画一的に設計されていることが多く、周囲と異なる特性の人は”異常”なものとして無視・排除されてしまいがちです。
一方で「ニューロダイバーシティ・パラダイム」は、「発達障害」の傾向など、人間が世界を認識・思考して行動するあり方が多様なこと(神経多様性)自体は自然で価値のあることだという見解です。そして、民族・文化・ジェンダーなど他の多様性と同様に、神経多様性(ニューロダイバーシティ)も社会的な不平等に晒されており、これを解決することは(個人の幸福はもちろん)社会や組織の存続とイノベーションのためにも重要だと考えます。
「社会的な不平等」というと抽象的ですが、例えば「相互協調的自己観」と呼ばれる文化においては、周りに合わせることが強く求められるため、周りと異なる特性を持つ自閉スペクトラム症やADHDなどの当事者は、別の特性に無理に合わせ続けて疲弊したり、「周りと違うから」と嫌がらせを受けたりしてしまう可能性が考えられます。実際、自閉スペクトラム症の当事者を社会が受け入れている割合を国際比較した研究では、相互協調的自己観の文化を持つ日本では自閉スペクトラム当事者を最も受け入れていないという状況が示されました。
一方で、「安定的な人間関係を築きやすい」など、「相互協調的自己観」の文化にもメリットはあるでしょうから、この文化をなくしたくないと思う人もいるかもしれません。このようなジレンマは、まさにダイバーシティの最前線と言えるでしょう。
経営や教育などへの応用

このようにニューロダイバーシティ・パラダイムは、もともと自閉スペクトラム当事者の生きづらさをもとに人権運動の中で形成されてきた考え方です。一方で、ニューロダイバーシティを導入することは、組織にとってもイノベーションの促進やエンゲージメントの向上などの利点があります。そこで、近年では企業・政府・軍隊・教育機関などでもニューロダイバーシティ・パラダイムを取り入れる動きが広まっています

参考資料:

ニューロダイバーシティの研究者であるNick Walker教授による定義(英語)

日本橋ニューロダイバーシティ・プロジェクト

経済産業省によるニューロダイバーシティ推進の取り組み

オーストラリア空軍の取り組み(英語)

スタンフォード大学・医学大学院の取り組み(英語)

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